村上春樹の小説ってこれ、詩じゃね?

皆さんご存知、村上春樹

 

 

普段本を読まない人でも、村上春樹の本は手に取ったことがある、そんな人は多いと思う。

 

 

ノルウェイの森」で知名度を飛躍的に上げ、「1Q84」では社会現象を巻き起こし、今や世界的に有名な村上春樹さんだが、そんな彼のデビュー作「風の歌を聴け」も、発表から今に至るまで多くの人に読まれている。実際、Google風の歌を聴けと検索すると、本当に多くの人のレビューや感想、考察がヒットする。

そんな、至る所で語り尽くされた作品を、僕もいまさらながら語っていこうと思います。

 

 

村上春樹、衝撃のデビュー作「風の歌を聴け」】

 

 

1979年に群像新人賞を受賞したこの作品。

実は、発表当時の評価は最悪だった。

 

 

まあ、正確にいうと、出版業界からの評価が最悪だったんですね。

 

 

これは村上さんがエッセイで実際に書いていたことですが、講談社の編集長から、

 

 

「君の小説にはいろいろと問題があるが、まあ、せいぜい頑張りたまえ」

と言われたそうです。

 

 

この話は単純に「出版業界が新しさを受け入れられなかった」といったことで完結するのですが、今でも

村上春樹はなんかキザったらしくて苦手だなあ」

といった人はたくさんいますね。

 

 

僕は思うのですが、村上春樹をきっかけに純文学を読むようになった人は、比較的、あの独特の春樹ワールドを受け入れている気がします。

 

 

逆に、今までに純文学を読んだことがあり、尚且つそれらの作品の良さがわかる人達は、あまり受け入れていないのかな、と思います。

簡単にいえば、文学に対する先入観をもっているか、いないかで、好みが別れるんじゃないかなと。

 

 

これは勝手な僕の偏見なのですが、やっぱり従来の日本文学って、ちょっと陰湿で堅い印象ががあるんですよね。
それが良さでもあるんですが、そういう、ちょっとジメッとした作品だからこそ人間の深層が表現されるっていう価値観を、どうしても優先させてしまうから、あの村上春樹のカラッと乾いた優しい空気感を、文学として受け入れられないのではないだろうか、と、思うのです。

 

 

でも、芥川も太宰も村上春樹カフカもみんな好きだ!!っていう生粋の文学好きもいますから、一概になにも言えないですね(あたりまえだけど)

 

 

 

 

 

 

では肝心の、「風の歌を聴け」の魅力について。

 

【ストーリーが魅力的な訳ではない】

 

もちろんストーリーも魅力的です。

 

 

鼠が乗っていた船が沈没したり、急にラジオが始まったり、火星の井戸に青年が潜ったりしてね。読んでなかったら、なんじゃそりゃ⁉︎ってなると思いますけど、これが面白いんですよ。

読んでいて、なんだか訳がわからないんだけど、面白い。しっかりとしたプロットで構成されているとは言えない。けど、それでも、面白くて何度も読んでしまうんです。

 

 

 

いってしまえば出鱈目なストーリーな訳ですが、何故こんなにも面白いのか。それは、

 

 

 

リズムが良いからなんです。

 

 

 

はい、リズムが良いんです。

例えば冒頭のこの文章。

 

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」
僕が大学生のころ偶然に知り合ったある作家は僕に向かってそう言った。僕がその本当の意味を理解できたのはずっと後のことだったが、少くともそれをある種の慰めとしてとることも可能であった。完璧な文章なんて存在しない、と。

 

 

読んでいて、心地良いんですよ。

意味は正直よくわからない。

けどなんか深い気がする。

凄くあやふやで不確かで曖昧なんだけど、なんかしっくりくる、気がする。

 

 

この感覚は、

詩を読むときや、音楽を聴く時と似ているんです。

 

 

音楽とか詩とかって、感覚的に楽しむものだと思うんです。もちろん、文章の深さで詩を評価する人もいますが、やはり、詩や音楽で一番重視されているのはリズムですよね。特にクラシックやジャズなんかは、すごく評価基準がすごく曖昧な側面がありますよね。演奏技術で評価したりもしますが、多くは、「良いと感じるか、感じないか」という、ざっくりとしたものです。

 

 

 

また、春樹さんは誰もが認めるジャズマニアで、専業作家になる前は、ピーターキャットというジャズ喫茶を経営していて、そこのマスターでした。

 

 

 

これは、「村上さんのところ」というファンとの交流サイトで話していたことですが、

「文体は常にリズムが良くなるように心掛けています。これは、クラシック音楽を好んで聴いていたことが少なからず影響していますね」

というようなことを仰っていました(正確ではありませんが)

つまり、村上作品には、ジャズやクラシックの心地良い“リズム”が反映されているんです。

そう考えると、

 

これはもう小説ではなく、詩です。

 

村上作品は、独特の世界観、それにリズムが加わることによって、更に魅力的や小説になるんだとおもいます。

 

まあでも、この作品は、鼠三部作と呼ばれるもののうちの一つで、ストーリーを重視してみても、とても面白いです。ほんとに。

気になった方は是非読んでください。

 

 

 

ではまた。